地方巡業用の土俵の話

地方巡業でも本場所と同様の大きさの土俵を会場内に作って力士の登場を待つことになります。

規定によると、土俵は670センチ四方で、高さが34~60センチまでと決められているようです。高さが厳密に決まっていないのは、床面から全て土を積み上げ、踏み固め、最後に叩いて仕上げるという構造になっていることから、ある程度同じ高さに仕上げることは出来ても、常に同じ高さの土俵を作れるわけではないということだと思います。

しかし、これは本場所で使う土俵に限った話です。地方巡業で使う土俵は本場所で使う土俵とは異なり全て土で作っているわけではありません。セメント状のような表面がちょっとザラザラしている土俵の型枠を使って、土は土俵の表面から約15~20センチほどの厚さに留めています。つまり土俵は上げ底になっているんですね。

土俵の型枠のパーツ

このような型枠を利用して土俵を作ることには、大きな理由が3つほどあります。
まず1点目として、土俵作りにかかる時間を短縮するためです。国技館の土俵は場所前に表層部を掘り起こして、新たな土を盛って土俵を作り直すという工程で土俵が作られていますが、このような部分的な補修による設営でも相撲協会のツイッターなどを見ると3日ほどかけて土俵を作っています。

地方場所では、全ての土を会場内に搬入するところから始まりますので、完成までに約1週間はかかっているものと思われます。

しかし地方巡業の場合ですと、このような時間をかけることは現実的に不可能です。多くの地方巡業は1日のみの開催です。ほとんどの勧進元は開催前日と開催日の2日間ということで会場の使用契約を結んでいます。ですから、土俵作りは開催前日の朝から作業を始めて、1日で作り上げてしまいます。土俵は夕方までに完成させて、土俵祭りも行わなければならないので、本当に短時間で完成させないといけないわけです。

そのため、このような型枠を利用した土俵作りが主流となっているのです。

次に2点目として、会場の床への負担を軽減するために型枠を使います。公共の体育館などでしたら頑丈な設計になっていて、多少の重さには十分耐えられるはずですが、それでも約7メートル四方という体育館のごく一部のスペースに通常では想定してない重さの土を盛り上げてしまうと床にかかる荷重は相当なものになってしまいます。

つまり土俵の重さを可能な限り軽減するために型枠を使うことになるのです。とは言っても、土俵を覆う厚さ20センチ弱の土の重さは約8トンです。これだけでも相当な重さですから、床の保護を考えると、このような作り方をせざるを得ないのです。

最後に3点目として、費用の問題です。1つ目の理由でも触れましたが、多くの巡業は1日のみの開催です。わずか1日しか使うことの出来ない土俵に多くの費用をかけることは難しいですよね。

土俵用の土として有名なのは、現在は埼玉県川越市近郊で掘削されている「荒木田土」です。近くの山や田畑、川辺から収集してきた土では土俵に適しているか分かりません。土の中に小さな石やガラス片が含まれていたりすると、力士が怪我をする危険もあります。

ですから、荒木田土をはじめとする、しっかりと精製された土を用意しないといけないのです。となると、当然のことながら土俵で使う土というのは商品として精製されているものですから購入費用が発生することになります。この費用がまた意外と高額です。園芸用土としても荒木田土は一般的に販売されていますが、決して安いものではありません。巡業用の土俵を作るために必要な荒木田土を手配するのには、およそ数十万円ほどかかります。

ちなみに荒木田土は「土のダイヤモンド」と評されているほど品質の高いものです。埼玉県の知事さんのブログでも平成29年5月29日平成30年2月13日の記事に荒木田土のことが書かれていますので、もしよろしかったらこちらも御覧ください。

そして、このような高価な土を使っているにも関わらず巡業が終わるとすぐさま解体して、土俵の土は廃土として処分されることになります。このようなことを考えると、本当にもったいない話ですので、コストを抑えるためにも土の量はなるべく少量に控えないといけなくなるのです。

以上のように、地方巡業用の土俵一つをとっても、色々と考えさせられる事情があります。
地方巡業では多くの力士と間近に接することが出来ますが、なかなか土俵に近付いたり触ったりするという機会はないかもしれません。しかしながら、土俵に上がる力士はもちろん、設営に携わった主催者側にとっても非常に思い入れのある土俵であり、神聖なものです。

このような視点から地方巡業をご覧いただくのも通な感じがして良いかもしれないですね。

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