今回は地方巡業を開催するにあたり、勧進元の権利義務はどのようになっているかについて触れてみたいと思います。
契約書に記載されている条項
以下は実際に相撲協会と勧進元との間で交わされる契約書の各条の表題です。契約書では勧進元という表記はなく代わりに興行主という記載がなされています。
(注)以下の記載では甲は相撲協会、乙は勧進元と読み替えて下さい。
- 目的
- 興行主の権利
- 責務
- 特に注意すべき事項
- 興行の詳細
- 興行の内容
- 興行の対価
- 乙の負担する費用
- 甲の負担する費用
- 費用負担の協議等
- 巡業時の事故等対応
- 権利義務譲渡の禁止
- 不可抗力
- 契約の解除
- 契約の解除の除外
- 反社会的勢力の排除
- 期限の利益の喪失
- 損害賠償
- 放送権等の帰属
- 秘密の保持
- 個人情報の保護
- 立会人
- 紛争の解決
- 合意管轄
興行主の権利とは
第2条の表題は「興行主の権利」となっていますが、特に凄いことが書かれているわけではありません。あくまでも契約した巡業に関することに限られている旨が記載されています。
これは当然と言えば当然のことで他の巡業のことや、ましてや本場所のことについて勧進元が行使できる権利がないことは誰の目にも明白ですよね。
もちろん自らの巡業に関しては権利があります。
ただ、契約書の内容を吟味すると、巡業に参加する力士に関する点について詳細はありません。「休場力士が出た場合はゴメンね」という趣旨の記述はありますが、その前提となる参加力士に関する規定はないのです。
つまりです。同じ日に別の会場で巡業を開催するかもしれないよと読み取ることが可能なわけです。
かつては一門ごとに巡業をしていた時代もあるわけですから、その余地を残していると考えることもできます。
ただ、実際にはそのような心配はいらないと思います。なぜなら、原則として全関取が土俵に上がるという前提のもとで勧進元は巡業の契約をするわけですから、同じ日に別の巡業の開催もされるということであれば契約しない勧進元も出てくるはずです。
また、契約に至るまでの間に開催日やその他詳細については逐一契約担当の親方から連絡が入ります。さらに開催日前後の開催地についても報告があります。
この際、本契約には至っていなくても、当該巡業の開催意思を協会に伝えた先後によって優先度合いが変わります。
わたしの場合、割と意思表示の時期が早かったようで、行田場所の前日の開催地について意見を言う機会が与えられました。わたしに伝えられた前日の開催地は行田から約30kmのところでした。距離はさほど離れてはいないものの商圏としては別の区域になる場所でしたのでそこで開催して構わないと契約担当の親方に伝えたのですが、現時点でわたしが知る限りの情報では前日は別の開催地になったようです。
双方の責務
基本的に相撲協会が負う責務は比較的限られています。
そしてその責務は大きく分けると次の2つです。
- 巡業の宣伝協力をするよ
- 巡業に行くよ
これです。この2つに集約されます。
他に双方が負担すべき費用についての取り決めもありますが、普通に考えて招聘元である勧進元が負担すべきものがほとんどで、相撲協会が負担する費用というのはそんなにありません。
その中で特筆すべき点は、巡業当日の力士の食事代と巡業用のポスター制作費用は相撲協会が負担するとなっているところです。
そして、これ以外に発生することが予見される費用負担や保障のほとんどは勧進元の負担となるのです。
次回に続く
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